Ananda Yoga

ヨガと医療|ヨガインストラクター養成エッセイ

ヨガと医療:健幸になれるヨガ

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ヨガと医療: 健幸になれるヨガ

私は化学を学んできました。

高校生のときから恩師は不思議な人が多くて、生物や物理化学の先生にも関わらず物質のオーラが見えるという方がいて、そのような話を聞く機会が多くありました。

その時、先生から、自然がわかれば化学がわかる、化学を学べば宇宙がわかるというようなことを言われたのを今でも覚えています。

宇宙は今もなお広がり続けており、化学で起こることは宇宙でも起こっていること、つまり化学がわかれば宇宙がわかる。

マクロの世界(自然や人での実験)で起こっていることはマクロの世界(細胞や分子レベル)で起こっていることと同じこと、要するに“宇宙がわかれば化学がわかる”という先生の持論です。そのような考えを聞き、化学は面白そうだなと思い今まで学んできました。

そして今、会社で人の病気や食事について学ぶこと多く、健康でいるためにはどうしたらよいのかとよく考えるようになりました。

Ananda Yogaで先生から健康の不調のサイクルの話を聞いて、納得するとともに、大変感銘を受けました。

ヨガについて学べば学ぶほど、ヨガの考え・智慧やアーサナなどは長い歴史の中で完成されており、病気予防だけでなく、生命・生活の質(QOL)、および自身のパフォーマンスを最大限に生かすことができるので、他には何もしなくてもいいのでは…というくらいに思ってきたのですが、今までヨガについてどのような研究がなされてきたのだろうと疑問に思ったので今まで学んできた科学的な知識を活かして私なりにいろいろと調べてみました。

現代西洋医学は、感染症・遺伝子異常などの仕組みの解明・画像診断のための機器の開発・iPS細胞の発見など様々な成果を挙げてきました。

一方で、現代医学の進歩の裏で、医学の発達ゆえに出現した医原病(患者の治療のために行われた医療行為が新たな疾患を引き起こすこと)の増加、高齢化による老人性疾患の増加、医療費の高騰による保険財政の破綻などの問題も出てきています。

そこで、病気を予防することが急務になってきました。

確かにワクチンなどの予防医学は役に立っていますが、その一方で副作用も問題になっています。生活習慣病などの予防については未だ有効な方法がありません。

一方、インドのアーユルヴェーダやヨガ、中国の気功などの伝統医学は、長年(5000年あるいは3500年)の経験を経て体系化されています。

現代医学的な検証はまだ十分なされていませんが、ヨガなどの伝統医学には共通して健康に関する知識や健康増進のための方法がたくさんあります。

今後の医療の展開には、このようなあらゆる有用な知識や手段を有機的に統合して活用する統合医療の導入を時代が求めています。近代西洋医学のみに頼る医療体制が抱える問題の解決策として脚光を浴びてきています。

しかし、“統合医療”は科学的根拠付けと臨床的実証がなされていないとの誤解を受けているという問題もあります。

そのような中、世界中で動物実験や人でのヨガに関する研究・試験が行われており、私たちの身近なところでいうと九州大学医学部の久保、岡らによってもヨガの健康への効果は、療法としてのエビデンスが徐々に確立されつつあります。

具体的な試験例では、ハタヨガの1時間のセッションを3~5人程度の人数で行って、前後で血圧は、ほとんどの例、特に高血圧の例で低下を示し、心拍数も減少したそうです。顕著な例では180/110mmHgが週1日3回のセッションで124/887mmHgに低下した例がありました。

単なる運動では、血圧が上昇するので、運動とは異なる血圧の変化です。

400人の高血圧患者を対象にしてアーサナ・プラナヤマ・瞑想法を3か月間実習させたところ、血中カテコールアミン↓、血漿ヒスタミナーゼ↓、血漿コルチゾール↑が得られたと報告されています。

また、気管支喘息患者でもヨガの実習前と後の尿中アドレナリン、ノルアドレナリンが正常化したことが報告されています。これらの他にも、ヨガのポーズの自律神経機能への影響などに関する研究が多数報告されています。

このように科学的研究においてもヨガが人体の自律神経機能や内分泌機能に影響を与え、ストレス耐性を高めることが示唆されています。

次に、予防医学だけでなく、コンディショニング:自身のパフォーマンスを上げること(本来の自分を表現する)にもヨガはとても効果的ということがわかりました。スポーツ選手の選手寿命も延びてきましたし、長寿社会になると私たちが当たり前に思っていた人生のプロセスが変わるかもしれません。

例えば、ヨガによって、アスリートでは体の歪みや弱点を認識し、ケガをしにくい体質に改善したり、劇団四季のような舞台俳優の方たちはスポットライトを浴びて交感神経優位になってしまう状態を調整したりするそうです。

このことは、身体だけでなく、睡眠の改善、精神の調整を行うことで本番に強くなるということにもつながります。本番に弱かったり、ケガをしたりすることは、とてももったいないことだと思うのでヨガでそれも予防できれば後悔することも少なくなると思います。

私も、クラシックバレエをしていたのですが、ヨガをもっと早くやっていればよりいいパフォーマンスができただろうなと思います。

最後にプラセボについて話をしたいと思います。

人の体には、とても不思議な一面があります。乳糖やデンプンなど、薬としての効き目のないものでも錠剤やカプセル剤をつくり、頭痛の患者に本物の薬として服用してもらう実験をすると、半数くらいの人が治ってしまうという事例があります。

薬(に似たもの)を飲んだという安心感が、体にひそむ自然治癒力を引き出すのかもしれません。これを“プラセボ効果”といいます。

その一つの例を、プラセボを利用した臨床試験にみることができます。臨床試験において治験薬の効果を調べるには、すでにある類似薬(対照薬)と比較する方法が、もっとも一般的です。仮に治験薬が、血圧を下げる効果をもつことを証明したい場合なら、すでに認可されている降圧剤のなかから類似した対照薬を選び、それと比較します。

しかし、治験薬がいままでにないタイプの新薬であったりした場合、比較すべき適当な対照薬がないこともあります。そうした場合には、外観や味を治験薬とまったく同じにしたプラセボをつくり、比較試験を行います。 その際、すでに述べたように、プラセボでもある程度の効き目がみられるかもしれません。そこで治験薬は、プラセボと比較してはっきりと上回る効き目があって、初めて薬として認められるのです。

例を紹介します。1990年イェール大学のラルフ・ホルヴィッツらによる実験です。

心臓発作を起こした2175人を対象に、ベータブロッカー剤とプラセボの効果を調べました。ベータブロッカー剤とは、心臓の動きを滑らかにして、狭心症、不整脈などを治療する薬です。心臓発作の後1年間にわたって、服用状況を調べ、その効果を調べました。

その結果、ベータブロッカー剤を定期的に服用した人の死亡率は、不定期に服用した人の3分の1、一方で、砂糖を入れたカプセル(プラセボ)を定期的に服用した人の死亡率は、不定期に服用した人の3分の1であったとのことです。また、プラセボ定期的服用者の死亡率は、ベータブロッカー剤不定期服用者の死亡率を比べて、半分以下だったとのことです。

つまり、薬を不定期に服用した人よりも、嘘の薬でもきちんとと飲んだ人のほうが死亡率が低くなっているというのはまさにプラセボ効果が発揮された結果といえます。

一方、プラセボはプラスの面だけでなく、マイナスの面もあります。例えば、手術前に医師から「術後は痛みが強くでるかもしれません」などと聞かされると、術後本当に痛みが強く出ることがあります。期待や希望がプラセボ効果をもたらすのとは逆に、悲観的な見通しや失望が否定的結果を招いてしまうことがあります。このことを“ノセボ効果”といいます。

こちらも例を1つ挙げます。マサチューセッツ大学医学部にジョン・カバットジンという大学院生がいました。初めて担当した患者さんは、中年の女性で、彼女は心臓の右側の弁に異常がありました。彼女の病態は、仕事や日常生活に支障をきたすほどではありませんでした。ある時、彼女の長年にわたる主治医が、彼女と挨拶を交わした後、見学に来ていた大勢の医師に向かって、「彼女はTSだ」と言い、部屋を出ていきました。

主治医が部屋を去った直後から、彼女の容体が一変しました。彼女は、強い不安に怯え、呼吸も脈拍も速くなって、肺や心臓にも急変を起こしました。彼女は「自分はTS(ターミナル・シチュエーション=末期状態)」と言われたと思ったそうです。

実は、医師は「TS(三尖弁狭窄症)だ」と言っただけだったのです。カバットたち研修生は、彼女の誤解を解くため一生懸命に説明しました。しかし、彼女の強い不安は消えず、症状は悪化していき、やがて肺浮腫が広がって、彼女は死んでしまいました。

これらのことからも“思い込み”は良い効果も悪い効果も実際の効果以上の結果が出る可能性があります。私たちの周りの環境は中立であって、結局は“人の心の作用”がそこにあるだけなのではと思います。

Ananda Yogaで“心の作用を止滅させる”ものであると知りました。

心の作用を止滅(感情をなくすということではなく)することで心をコントロールし、周りの環境もコントロールできる。そうすれば、“心が平安”で本当の意味での健康(健幸)になるのではないかと思います。

現代医学が無視してきた「意識」というものは健康・病気とは切り離せないものです。今後の医療は予防医学の時代(普通〜好調にも医療が入るべき時代)になると思います。

昔から予防医学という考えは存在していたのですが、現代では、溢れた情報のなかで視野が狭くなり、“思い込み”と“あたりまえ”に支配され、忘れ去られてしまったのではないかと思います。今、フィットネス、ヘルスケア全体が活性化していて予防医学が見直されてきている時代です。

ハタヨガ(ハ;太陽、タ;月、を融合したもの)の意味のように古代から現代までの医学を統合、そして融合していけば、今後健幸な人が増えていくと思います。

そのために私なりの“健幸”になれるヨガを少しずつ周りの人からでも伝えていきたいと思います。


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