Ananda Yoga

ヨガとアーユルヴェーダの関係性|ヨガインストラクター養成エッセイ

ヨガとアーユルヴェーダの関連性と、これらと中医学との比較

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ヨガとアーユルヴェーダの関係性と、これらと中医学との比較

ヨガとアーユルヴェーダはどちらもインドの伝統的な文化であり、名称は日本でも一般的に知られているものです。しかし、名前はよく聞くものの、なんとなく健康に良いものというイメージで、本来のヨガ、本来のアーユルヴェーダについては私もよく分かっていませんでした。

今回、この講座で本来のヨガとは何かを学び、その中でアーユルヴェーダのことも少し触れる機会がありました。そこで、アーユルヴェーダについて調べ、ヨガとアーユルヴェーダの関連性はどういうものなのか、整理しました。

また、日本に身近な伝統医学として、中医学や漢方がありますが、これらと、インドの伝統文化であるヨガやアーユルヴェーダとの比較を行いました。


まず、ヨガとアーユルヴェーダの関係についてです。

ヨガは、講座で学んできたとおり、心の科学とされるもので、心が主題です。

心の作用を制御することによって、本来の安定した幸福に満ちた状態へ向かうもので、意識開発のために行われるものです。
聖典「ヴェーダ」から発祥したとされ、背景には宗教的な要素を含み、その最終目標は輪廻転生からの解脱です。

ヨガやアーユルヴェーダでは、人の体を、心・プラーナ・体で捉えます。これらは現れ方の違いによるもので、基本は同じものです。粗大なものほど扱いやすいため、ヨガでは、心にアプローチする為の手段として、体やプラーナのコントロールから行われることが一般的です。

実践内容として中心となるのは、アーサナ、プラーナヤマ、メディテーションです。
これらの実践を通して、心の作用を制御できた時、本来の自己(プルシャ)のままでいられ、外的な出来事に関係なく、精神的にいつも良い状態でいられます。

このように、ヨガでは心へアプローチすることが本質です。

しかし、手段として体を使うため、準備として体の清浄も無視できない要素です。特にハタヨガでは、シャットカルマを最初にすべき事としています。
また、ヨガを行うことで、結果として体も健やかな状態へと整います。

一方、アーユルヴェーダは、世界三大伝統医学の一つで、言葉上、「生命の智慧」を意味します。

つまり、生き方の知恵です。ヨガと同じく聖典ヴェーダから発祥しました。5000年もの歴史があり、世界最古の医学とされています。医学といっても、病気の治療だけでなく、予防、健康増進の為の生活方法全般を含み、自然と調和し心身が幸福に満ちた生き方を目指すものです。

アーユルヴェーダでは、体を見る際の重要なものとして、トリ・ドーシャ(ピッタ、カパ、ヴァータ)という3つの性質があります。人それぞれの体質をドーシャのバランスで捉えて診断し、その体質に合う治療や養生を行います。

実践方法として、ハーブの調合薬、薬草油のマッサージ、パンチャカルマという浄化法などがあります。

これらは、体の外側からアプローチするものであり、アーユルヴェーダの主体は体となります。

しかし、アーユルヴェーダは体の健康だけを目指すものではありません。体を浄化することで、体と相互作用のあるプラーナや心へも作用し、心身ともに健康へ導いていくものです。

以上のように、ヨガでは心をメインに内面から整え、アーユルヴェーダでは体をメインに外側から働きかけます。この二つはメインで見る所やアプローチ方法が違いますが、どちらも、心と体と意識(本来の自己)を複合的に捉え、本来のバランスへ整えるもので、最終的に目指すところは同じといえます。

また、別の見方をすれば、ヨガはアーユルヴェーダにおける生活法の一つとして取り入れられるものであり、また、アーユルヴェーダはヨガにおける体の清浄に有用な方法でもあります。

従って、この二つの関係性は、密接に係わり合い、同じ目標に向かってお互いに補完し合うものといえます。


次に、ヨガやアーユルヴェーダのインドの伝統文化と中医学との比較です。

中医学も、アーユルヴェーダと共に世界三大伝統医学です。より馴染みのある中医学と、インドの伝統医学、この2つの違いは何か、また共通点はあるのかについて調べました。

まず、ヨガやアーユルヴェーダのインド哲学の考え方について、さらに詳しく見てみました。

インド哲学では、自然界の全てのものは5元素(空、風、火、水、地)から成ると考えます。つまり、全てのものは自然と連動しています。

体質を表すドーシャもこれらの5元素からなります。
・ピッタ・・・火と水の性質 ;変換代謝のエネルギー
・カパ ・・・水と地の性質 ;安定、構造維持のエネルギー
・ヴァータ・・・風と空の性質;循環、運搬のエネルギー

ドーシャとは、増えすぎたものを意味します。これらトリ・ドーシャのバランスが取れているとき、本来の生命活動が遂行され、健康を維持できます。

長年にわたる不健康な食生活、消化力の低下、老廃物の蓄積、睡眠不足、環境汚染、ストレスなどが、ドーシャのバランスを乱し、「アーマ」と呼ばれる毒素を作ります。そしてその蓄積が、不調や病気を招きます。

従って、アーユルヴェーダの治療方法は、毒素を抜くという浄化法が中心となっています。

主なものを以下に挙げます。
・オイルマッサージ・・・体質に合うオイルを血液や骨髄に浸透させることで、過剰なドーシャやアーマを排出する
・発汗法・・・薬草の蒸気サウナで体を温め、過剰なドーシャやアーマを除きやすくする。
・ハーブ煎じ薬・・・生や乾燥ハーブを体質に合わせてブレンドして、煎じて服用する。
・パンチャカルマ・・・催吐法、瀉下法、浣腸法、点鼻法、瀉血法があり、体質に合わせて用いられる。

ドーシャは、一定のものではなく、変化します。 特に影響を与えるものとして、時間、ライフスタイル、環境、天体があります。

そのため、日々の生活でアーマを作らないように、時間や環境に合わせた食事、運動、瞑想などを体質に合わせて取り入れ、その人が本来持っているドーシャのバランスへ整えていくことが大切にされています。

具体的に、一日の過ごし方としては、ヴァータが高まる朝4~6時ごろに起き、トイレ、白湯を飲む、舌・鼻・咽の洗浄、入浴、ヨガを行います。ピッタが高まる昼頃に一日のメインとなる昼食を食べ、仕事や家事などしっかり活動します。ヴァータが高まる夕方はリラックスの時間をとり、カパが高まる夜は、身に付きやすい時間の為、軽めの食事を早めに済ませて、午後10時までに就寝します。

食事では、暮らす地域でとれる食材を選び、調理したてのものが理想です。また、6つの味:ラサ(辛、酸、甘、塩、苦、渋)と性質:グナ(重、軽、油、乾、熱、冷)を考慮します。

・ヴァータを鎮めるものは、甘・酸・塩味と、重・油・熱性
・ピッタを鎮めるものは、甘・苦・渋味と、重・油・冷性
・カパを鎮めるものは、辛・苦・渋味と、軽・乾・熱性

食べるタイミングは空腹を感じてから、満腹になる手前でやめます。

季節によっても高まりやすいドーシャがあり、春はカパ、夏はピッタ、秋冬はヴァータです。それぞれのドーシャを鎮める生活を行う事でバランスをとります。

対する、中医学は、中国で発祥し4千年の歴史のある医学です。そして、中医学が日本に入って独自に発展したのが漢方です。漢方と中医学の基礎は、ほぼ同じといえます。

中医学では、病気の治療以上に、未病(病気になる一歩手前)の治療や、病気にならないための養生を、より尊いものと考えています。

中医学における心と体の見方について「心身一如」という言葉があります。心と体は同じという意味で、一方が悪くなれば他方も悪くなります。そのため、病気や不調を症状ではなく精神面も含めた体全体で捉え、根本からバランスを整えて行くことで、本来の健康へ導いていきます。

中医学でも、あらゆるものに自然界のエネルギーが存在すると考え、木、火、土、金、水の5行論で捉えます。「天人合一」という言葉があり、人も宇宙と連動していると考えます。

中医学で体を診る際に重要となるのが、「臓腑」と「気血水」です。

「臓腑」は、体の機能を5つに分けたもので、肝・心・脾・肺・腎からなります。これらは自然界のエネルギーと連動しており、それぞれ木、火、土、金、水とつながっています。

「気血水」は、体を構成する物です。
・気・・・生命エネルギー
・血・・・栄養、血肉を作るもの
・水・・・体内の水分、潤い

これらの要素から体全体を見て、過剰なもの、不足しているもの、逆流しているものなど体質「証」を判断し、証に合わせて治療を行います。

治療として実践されるものは、代表的なものが、生薬の煎じ薬(漢方薬)、鍼灸が挙げられます。健康法としての気功も、一部で治療として行われています。

・煎じ薬・・・自然の草木、鉱物、動物由来の生薬を体質に合わせてブレンドしたものを煎じて服用する。
・鍼灸・・・経絡(気の通り道)において交通の要所となるツボを刺激して、気の流れをよくする。
・気功・・・呼吸と意識と動きを連動させたもので、「気」を増やすことを目的としています。

そして、体を本来のバランスに整え、生命力を高める為に、治療としても予防としても養生法が大切にされています。
心の状態、食事、運動、睡眠、環境すべての影響を受けて、心身の健康がつくられます。

自然に沿った生活スタイルが心身のバランスの取れる養生法であり、体質や時間、季節、暮らす土地環境に合わせた過ごし方が、生命力を高めていきます。

さらに、自然界のエネルギーより大きく捕らえると、全てのものは陰のエネルギーと陽のエネルギーを含み、これらは留まることなく移り変わります。絶対的なものはなく、揺れ動く中で陰陽の平衡をとることが、安定した本来のバランスです。

例えば、一日の中では、真昼は陽が極まる時間で、そこから陽が減り、陰が増え始めます。真夜中は陰が極まる時間で、そこから陰が減り、陽が増え始めます。陽の時間は、活動的に動き、陰の時間は滋養の為に休みます。

季節では、夏に陽が極まり、冬に陰が極まります。夏は早く起きて活発に動き、冬はしっかり寝て、ゆっくり過ごし、栄養を蓄える過ごし方がすすめられます。

また、春は肝、夏は心、秋は肺、冬は腎、そして季節の変わり目は脾、が調子を崩しやすい機能です。季節ごとに、それぞれ不調が出やすい機能を整えるような生活を心掛けます。

食事では、「身土不二」の考え方で、暮らす土地で採れる旬の食材を選びます。腹八分をまもり、良く噛んで食べることが大切です。また、食べ物の持つ性質(熱、温、平、涼、寒)や五味(酸、苦、甘、辛、鹹)から、体質に合わせて摂ります。


ここまで述べてきたように中医学とヨガやアーユルヴェーダを比較すると、共通する点が非常に多いです。

・長い歴史の中で培った、経験的な医学であること
・自然界のエネルギーと連動した診断、治療法、養生法
・心と体は同じという見方
・不調を、症状ではなく、体全体の問題と捉えていること
・体質に合わせた根本的な治療を行うこと
・生命エネルギーである気やプラーナに着目し、その流れを良くすることを重視していること
・病気の治療だけでなく、予防、養生を重視していること
・太陽と月のエネルギー、陰陽の考え方
・食材の選び方
など

以上のように、別の場所で発展したインドのヨガ・アーユルヴェーダと、中国の中医学ですが、考え方・方針は非常に似通っています。

逆に、大きな違いについて挙げられる事は、インド哲学では、単なる健康増進に留まらず、意識開発という点が重視されており、心の科学が発展しているということが挙げられます。

精神的に新しい境地に至るというヨガは、特有な存在です。

心の安定は、中医学でも考えられてはいますが、道徳、ストレス発散、運動、睡眠、規則正しい生活といった一般的な事項のみで、ヨガのように、心に着目して体系化されたものがありません。ヨガと類似する気功は、心の安定というより、気の拡大、健康増進という面が強いようです。心の安定が重要なことだという事は明らかですが、扱うことが難しい部分であり、ヨガはとても有用なものだと感じました。

他に、インド哲学では浄化という一点に集中しているのに対し、中医学では瀉す方法だけでなく、補う方法も用いている事も、違いとして挙げられます。

これは人種や気候の違いも影響があると考えられます。一般的に、日本人は筋力や体力がある方ではありません。また、インドでは、乾季、雨季、暑季のみで基本的に暑いのに対し、四季がある日本や、地域により気候が大きく異なる中国では、場合によっては補う事で、寒さに抵抗するなど、体の抵抗力が高める必要も出てきます。

根本の考え方が非常に似通う二つの文化ですが、具体的な実践方法の違いは、土地環境や生活様式、人種などの要因が合わさった結果で、それこそ地域に根ざした伝統というものなのだと思います。

以上をふまえると、全世界共通の心を扱うヨガは、地域、体質に関わらず役立つもので、とても素晴らしい文化だと感じました。

治療や食事療法など体へのアプローチがメインとなる事は、地域、体質、生活などの影響を受けて合う方法は様々です。その土地で受け継がれてきた伝統的な養生法を参考にしつつ、自分に合う方法を見つけていく事が大切なのだと思いました。


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